●はじめはパリプロ病気シリーズなんて作るつもりなかったんだけど、「肺気胸はこわくない」ができてから「どうせなら今までの怪我と病気のことを曲にしたアルバムでも作ろっかな」なんて思って作り始めた。プロフィールにも怪我・病気欄があるから要チェキラ。ちなみにもちろん全部実話だからね。そこんとこ、よろしく!


01.「肺気胸はこわくない」

病気シリーズ第1弾。曲名からそのまんま、肺気胸の曲。肺気胸は自覚症状があるやつだけでも10回はなってるし、手術とか入院も多め。なので思い入れのある病気。

元々はバンド時代に作ってたんだけど、パリプロ風にリアレンジしたら違う雰囲気になった。メロも全然違うし、楽器もピアノとベースだけのシンプルなやつだった。同じ人が作ってアレンジもしてるのに、面白いよね。


02.「誘惑」

病気シリーズ第3弾。これは身体的な病気ではなくて、精神的なやつ。欲望がテーマ。音楽のことになるとおれは周りのことがどうでもよくなっちゃって、今までにたくさんのひとを傷つけてきて、今でも傷つけたり迷惑をかけたりしてるから、もはやこれは病的なものだと思って。別にお医者さんに診断されて「あんた、病気だよ」とか言われたわけではないんだけどね。ちなみにこの曲はバンド時代に「春っぽい陰鬱なやつを」という発注で作られたやつで、「メロディがないし、バンドで再現できない」と言われて見事にボツになったやつを「くそー」と思って無理くりメロをつけてみたものの、埒が明かないのでミュージカル風にしてみた、という完成までにかなり月日と苦労がかかっている曲。ライブでやるときは、出演者とお客さんには結構気を使ってやるんだけど、最近気を使わないで平気でできるようになってきた。


03.「Track & Field」

病気シリーズ第5弾。ラップなんて絶対できないと思ってたけど、近田心平さんの「エンターテイナー」とゆう曲の影響で初挑戦。

中学生の頃、なかにしは意外にも陸上部。おれの世代は陸上部の募集が最初はなくて、でも後から「やっぱ募集することにしたよ」となり少し話題になったので、わりとトレンドな部活だった。モテたくて必死だったなかにしは「モテるなら運動部っしょ!でも球技と協力プレイできないしなあ…あ!陸上部!」と思って張り切って入部。でもすぐ怪我(円位脛骨の切除)をして、実質1年間の活動。そんな思い出をラップに乗せた。ちなみにタイトルはヒップホップの“トラック”とかけてる。曲中のソロはパリプロの某曲を拝借。そしてトラック自体も、元ネタがきちんとある。さらには元ネタの元ネタまでオマージュしてるので、もしかしたらマニアにはたまらないかもしれない。そういう意味ではしっかりヒップホップしてるぜ!


04.「病院から星を見てる」

病気シリーズ第4弾。この曲は具体的な病気の曲ではなくて、入院中にいつも感じることを曲にした。入院中の夜って、カーテン越しに窓からの孤独が突き刺さるんだ。そんなときは星を眺めて気を紛らわせようとするんだけど、町の灯りでそんなにたくさんは見えなくて、ますますさみしー気持ちになって、「おれは必死で生きてるのに、きっとおれが死んでも大したことないんだなー」なんて思って、結構しくしく泣いてしまう。


05.「フィルムズ」

病気シリーズ第2弾。網膜剥離。唯一、発症中に作った。目の調子がおかしいから眼科にいったら「すぐ入院しないと失明しちゃうよ。でもいまお盆で病院やってないから、2日間自宅待機ね」とか言われて、その待機中の2日間で作った曲。すごく怖くて不安だった。「おれ、目、見えなくなるかも」「なんでおれなの!」とか自分勝手な怒りが出てきたり。逆に「すげえ曲が生まれるチャンスだぜ!」とか思ってなんとなくギターを弾いたらぱーっと出てきて、嬉しかった。本当はもっと大げさなアレンジにしたかったけど、これに関してはシンプルな方がいいかなーという判断で、シンプルに仕上げた。


そんなわけで、全曲解説終了。


今回の作品は、テーマには統一感があるけど、サウンドは様々。チャンネルが30トラック以上の曲から、最小限のものまで。

曲中では明言してないからここに書くけど、おれが言いたいのは「病気との付き合い方は医者じゃなくて自分が決める」ということ。もちろん未だに後遺症とか手術跡が痛むことがあって、でもそれって医者はどうにもできないことだから、「今日は湿気が多いから、傷跡に気を使わなきゃ」とか考えて行動しなきゃいけない。これがあてはまることって、たくさんあるから病気になったことはひとつも後悔してないし、むしろいい経験になった。なにせミニアルバム1枚できちゃったからね。

助けてくれたお医者さんたち、医療費を負担してくれた両親、そして国民健康保険に感謝!